今日のクリップ

絶対的優位性はどのように確保すればよいのか。オンリーワン商品の場合は,知的財産権の保護などによってコピーを防ぎつつ,さらにユーザーに一定期間受け入れられるように設計する。世界一安い商品の場合には,「負けないコストテーブル」の下でものづくりを遂行する。前者はまさに,VE(Value Engineering)の世界だ。私は,VEの適用の仕方で勝負が決まると思っている。一方,後者は一見,設計力〔MD(Modular Design)や共通化など〕や生産技術,製造技術の世界だが,実はここにもVEが関与する。

 この構図,どこかで見たような…。そう,QCサークルである。QCサークルの経験のない幹部が「QCサークル」「QCサークル」と連呼する構図と同じである。私はこれを「未経験者のやらせ」の構図と呼んでいるが,こうした現場から乖離した幹部のまずい姿勢が日本のものづくりを壊しつつある。

 VA/VEでもQCサークルでも,そんなによいと思うのなら,幹部が自ら率先してやってみたらいい。私は,指導先の現場でこう言い続けている。実際,ある会社の幹部に,「役員会のメンバーでQCサークルを組んでみたらよいではないか」と勧めたら,現場・現物・現実に接しようとしない彼らは案の定,尻込みして実行しなかった。

 ここで強調しておくが,VEは若手や新人の教育ツールではない。勝つ商品創りのためのツールである。だからこそ,第一線のエキスパートが実行すべきなのだ。

経営幹部がVEに何を求めるか─。本音は単純だ。「コストを下げてくれ」であって,決して「競争力のある商品を創ってくれ」とは言わない。

単にコストを下げたいのであれば,私はまず,ムダとりから始める。

 ところが,VEに関して勉強不足の幹部たちはここで「VA/VE」と唱え,部下たちはその誤った発想を植え付けられてしまう。神秘で奥行きの深いVEの技法を,単なるコストダウンの手法と勘違いしてしまうのだ。

 VE活動は,(1)究極の新商品を創造する活動(2)勝つ設計のための商品コンセプトを創造する活動(3)他社に勝る機能・世界一安いコストを創造する活動─である。企業の命運を左右するような戦略性の高い性格を帯びているのに,アサインされるメンバーはといえば,なぜか新人や初心者ばかり。エキスパートが参加しないために,中身は薄っぺらで使い物にならないケースが多い。

 VE活動は,慣れていないと時間がかかる。加えて,時間が必要なことを理解していない管理者が時間を十分に与えないために,どうしても中途半端な活動に陥ってしまう。特に,新人や未経験者に対して難題をぶつけても,効率など上がるはずがない。

「目標はしっかりと出している」と言うが,赤字に苦しんでいる。目標は,出せばいいというものではない。管理しない目標など目標ではない

VEの方程式に示したF(機能や品質,サービス性,クライテリアなど)とC〔製品コストや投資償却,BEP(Brake Even Point,損益分岐点)など〕,それぞれについて目標を定め,その達成度をしっかりと確認する管理を実践していくことが何より重要

何件やったとか,改善金額をいくら出したとかいった目線の低い発表にうつつを抜かしていてはならない。