今日のクリップ

 工場の話はそのままITの現場に持ち込めない話が多いんですけど、この話は参考になった。

 VEのもうひとつの特徴は犠牲のとらえ方です。同じ機能を果たす製品が多く出回っていると、我々は最も安いものを選ぶと考えるます。同じ欲望を満足させてくれるものなら、犠牲(あるいはコスト)の少ない方を選ぶと考えました。つまり、安ければ売れるしいう考えが、現在の日本の産業を窮地に陥れています。

 現在の多くの消費者は、同じ価格もしくは低価格で、より質の高い商品を望んでいます。ところが、VA/VEの手法には、より品質の高い製品を開発する技術がありません。供給側の価値観と、市場側の価値観を調和させるのが、本来VE/VAに求められる機能です。ところが、コストダウンによる価値向上の手法に依存し過ぎてしまいました。

 それを安直な成果主義人事制度が加速させてしまいました。コストダウンによる価値向上は、効果金額で測定しやすいです。その反面、機能向上による価値向上は、不確実で測定しにくいです。評価されなければ、人は行動を変えることはまれです。人事評価も“機能向上による価値向上”への転換を阻止しています。生産現場にVE/VAのノルマを課すことによって、この傾向を助長し、企業利益にマイナスの影響を与えています。

気を付けなければならないのは、人の認識にはしきい値があることです。実際には機能が僅かながら低下しているのだが、人はこれを認識できず、同じ機能を持っていると認識してしまいます。これがVEは品質低下活動といわれるゆえんです。これを繰り返すと、競合他社から一気にしきい値を超える機能向上を行われることもあります。

なお、機能は少々下がるが原価が大幅に低減できれば価値が向上するとの考えがあります。しかし、これはVEでは取り上げない考え方です。VEの考えでは、製品は所与の機能を維持している維持しています。必要な機能下げるとなると、もはや従来の製品ではなく、別の製品になるのです。

現在は製品が成熟されて、良い商品を長く使う傾向がはっきりと現れてきました。 これに対して、VE/VAの手法は、販売価格を下げることに使われ、耐用年数を延ばすことによる実質的なコスト削減に対応できていないように感じます。

購買部門や製品ができた後で行なうVEはセカンド・ルック・VEと呼び、設計時におけるVEをファースト・ルック・VEと呼び、製品企画段階やサービスにおけるVEをゼロ・ルック・VEと呼んでいる。
(略)セカンド・ルックVEでは生産設備や金型等が完成していて、それら設備のために効率的なVEは行うことができない。セカンド・ルック・VEは上記1のケースである機能を変えず、コストを下げるVEを中心に行われている。更に、美的価値を含んだハイタッチの部分に適用することができず、ブラックボックスの部分に限定されることになる。そのため設計時のファースト・ルック・VEや商品企画時のゼロ・ルック・VEの方が、セカンド・ルック・VEより効果が大きく、VEの重点が移っている。

VE/VAの効果は、ファースト・ルック・VEやゼロ・ルック・VEの方が効果が大きい。ところがVE/VAは技法としての発達の経緯から、現在でもセカンド・ルック・VEを中心に行われていることは残念なことである。ただでさえ、セカンド・ルック・VEは『落ち穂拾い』と言われるように、その効果は限定されたものである。