ハケン関係

 一つ前のエントリーで「スキルアップ」なんてことを書いてしまった。

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 救済にならない救済案 - カレーなる辛口Javaな転職日記

派遣切り救済雇用 応募サッパリ

派遣切りで斬られた人が一時しのぎにお役所仕事や本業とは無関係な仕事をやったとしてもキャリアにはならず,それはニートやフリーターと同じ扱いとなる.お役所の雑用係として年数を重ねれば重ねるほど再就職が困難になるわけだ.だから明日死んでも構わない人ならともかく,まともに将来を考えている人ならばキャリアにプラスにならない仕事は,迂闊に引き受けるべきではないのだ.

 職歴なしのニートとかなら、とりあえず職歴のつく仕事をやれば何もやってないよりマシになる。
 しかし、ハケンの人は必ずしもそうとは言えない。
 かといって、空白期間が出来てしまうとそれはそれで不利になるというジレンマ。
(ITエンジニアの場合は切実。一貫性のないキャリアパスは将来を棒に振りかねない。また、技術者の場合、一度ディスカウントすると景気が回復してもなかなか単価を引き上げられないから、仕事が取れないからってディスカウントも出来なかったりする。受給曲線みたいなモデルが適用できない分野なんです。)

 雇用を流動化して、正社員の解雇規制を解除すれば万事解決する教を唱えている人たちは、企業側の採用ロジックのことをわかってるのかな?
 日本って、履歴書に空白期間があると異常なまでに冷遇されるよね。海外の就職・転職事情はよく知らないから比較が間違っているかもしれないけど。新卒偏重とかだって、けっきょくは同じ文脈の上にあるのではないかと。


 ただ、臨時職員に応募してないハケンの人たちって、本当にキャリア形成だけの理由でためらっているのかな?
 そのあたり、ちょっと違和感があるんだよね。
 例えば、あるハケンの人がいたとして、その人の「キャリア」を自動車工場での勤務と仮定すると、役所での期限付きの事務補助なんかは「キャリア」形成の上では「寄り道」になってしまう。
 この事務補助の仕事って、要はパートタイム労働に過ぎないわけで。事務のパートを2年も続けちゃったから、自動車工場での「キャリア」形成に支障が出たとしたら、それは景気要因か本人が役所の仕事に馴染んじゃったからのどちらかではないかと。

 2年後には自動車産業の景気が回復しているかもしれないし、回復していないかもしれない。
 回復していたとしたら、それはもう人手不足なわけですよ。とすると、多少ブランクがあったとしても経験者が優遇されるのは当たり前。不景気の間は、現職で続けられる人数が絞り込まれているわけだから、上位の競合者はほとんどいないはず。

 もし、自動車産業がこのまま転げ落ちていくなら、もう産業間で労働力人口を移動しないことには。そうだとすると、産業間での労働力人口の移動をバッファする受け皿がどこかに必要になるわけで。
 職業訓練所とかも、言ってみればこのバッファの一つの種類に過ぎない。但し、政府が運営する=非営利なバッファは、景気浮揚にプラスに働かないので、ダメージが長期化する可能性も考慮が必要。
 それと、産業の創出や雇用の斡旋なしで訓練だけやったって無意味。既存の職業訓練施設にそれを期待するのもどうかと思うね。

 「セーフティネット」論の最大の弱点は、訓練する内容に言及していないこと。
 個人的には、もうね、面倒くさいからいっそNGOでボランティアしてました、とかでいいんじゃないかと思ってる(生活費は政府からの助成金で賄ってもいいだろう)。
 どうせ新しい産業なんてそうそう出てくるわけないし、たとえば環境問題とか、ちょっとバブルっぽい動きが出てくれば、そこから雇用がわーっと生まれてくる。
 一旦雇用が発生すれば、意外となんとかなるんじゃないか。バブルがはじけたとき、業界は違っても職種が近ければ何とか転職できるかもしれないし。あくまでもNGOが腰掛けになる、ってことで。

 問題はやっぱり、この雇用不安に乗じて労働集約的かつ将来の展望のないブラック産業が人をかき集めてしまうこと。
 労働力人口の移動をバッファする受け皿には、産業としての安定性が必要だと思う。
 安定性という面では、役所に勝てるところは他にない。でも、役所仕事は基本的に付加価値を生まないから、役所任せにしておくと景気回復が遅れてしまうかもしれない。

 しかし、それにしても政府の施策。もうちょっといいアイデアはないものかね。少なくとも、林業とか、採算性のある事業が成り立つのか?(森林の仕事ガイダンス2009 - 「森林の大切なお話」トークショー)
 ※個人的には、営利ビジネスとしての林業は絶望的だと思う。広報のセンスのある人材を確保できれば、NGOとかでやっていける可能性はあるかもしれないけど。でもNGO職員を安定した「雇用」の創出源と看做すことには強硬に反対させていただく。理由は福祉関係と同じ。状況が福祉関係と大差ないから。

 んで、役所の事務補助の仕事に、ハケンの人たちが応募しなかった理由について。
 その前に一旦整理。一口でハケンといっても、色々いるから一緒くたに論じることはまず無理だと思う。

 昨今ハケン、ハケンといえば、自動車工場の期間工のイメージが強いわけだが、アキバ殺傷事件が起きる前までだったらF1の事務員のイメージの方が強いと思う。
 F1の事務員というと、それこそ就職氷河期真っ只中なロスジェネ世代も含まれるわけだが、彼女たちの境遇を慮ればスキルアップしないことにはこの先仕事がなくなるかも、という強迫観念か厳然たる事実かに背中を突っつかれる毎日と思われる。
 とすると、役所の事務補助なんていうと、まさにキャリアダウンの危険と背中合わせだ、という話になるのかもしれない。

 とは言え、資格を取れば未来が開けると仮定すれば、役所の仕事はプラスにはならないかもしれないがマイナスともならない。問題は資格を取ったからと言って未来が切り開けないこととか、そういったところにある。
 或いは、既に資格で仕事を取っていたような人が、そうした仕事を失ってしまったということかな?だとしたらもろにキャリアダウンだ。それなら納得。
 (しかし、持っているだけで仕事を取って来られるような資格なら、相当な希少価値があるはず。希少価値がある時点で、ニーズが減るとはちょっと考えにくい。)

 それでは、自動車工場の期間工がどうして応募してこないのかについて。
 理由1。慣れない仕事を嫌がってのこと。これは接客業とか警備とかその辺も同じことだと思われる。甘ったれたこと言うな、という意見もちらほら見かけるけど、おまえらこそ接客業なめんなと言ってやりたい。(第一、そっちの分野は留学生なんかと激しいパイの取り合いになってる。まだまだ人手不足とは言っても、今後さらに買い叩かれることは考えないのかね?)
 理由2。特にハケン叩きをしている人間が言うように、単純に報酬が下がるから(期間工は、雇用の不安定さの補償として相当な報酬を得ている)。
 理由3。情報に接する機会が乏しいから。これはもうネットカフェ難民とかと同じ。寮から追い出されて宿無しになっているとしたら、たぶん同じ条件だ。
 理由4。もう不安定雇用はこりごりだから。確かに納得できる理由ではあるけれど、本当に生活に困窮していたらそんな理由で諦めたりするか?ちょっと考えにくい。(こういう問題については、役場の仕事は労働力人口の移動のバッファにさえなればいいんだから、勤め上げたら転職の斡旋するとかいろいろできることはあるはず。)
 理由5。派遣村みたいにボランティアのインフラが充実しているから。んなわきゃない。日本のボランティアのインフラははっきり言って貧弱です。その理由は簡単。活動の少なからぬ割合が政治運動に吸い取られているから。

 理由1〜5の順番は、私が想像しているところの理由の比率でもある。ってゆーか、実際応募してこなかった人にヒアリングしてみたらどうなのよ?>役場
 もっとも、ヒアリングをしてみたところで、その回答が本音ベースのところであるかというと、それも疑ってみた方がいいような気がする。

 最大の理由は、雇用ということそのものに対する不信感が醸成されたことではないのか?
 不景気と言えば人減らし、みたいなトレンドになっているから、解雇することはあっても採用することなんかあり得ないだろ、というムード。

 ムードとして諦めを共有している。だから、『役場が募集をかけてて、応募したいけど倍率高そうだからと諦めたら、案外簡単に採用されそうだとわかった。そうとわかれば今から早速応募だ』ということにはなかなか繋がらない。
 応募しない理由を、ムードとして共有してしまっている。未経験だからとか、報酬が下がるとか、いろいろ理由はあるけれど、意思決定をする前にそういう理由が示されてしまっているから、そうした理由に合わせて意思決定を『させられてしまっている』のではないか。

 んなわけあるかい、アホか。というツッコミはあるかもしれない。
 マクロな社会心理として、そういうネガティブな方向に流れるかどうかは別として、個々人のミクロな領域では、そういうシフトが起こってもぜんぜん不思議ではないと思うんだがなぁ。
 どうっすか?