スパコン議論その他

 実は、昨日分をage忘れていたのでまとめてアップします。

 政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)が来年度予算の概算要求をめぐる「事業仕分け」で、官民共同の次世代スーパーコンピュータースパコン)開発計画を事実上凍結した。

 今回の事業仕分けでは「世界一でなくてもよい」などと指摘され、それが凍結の理由になったという。金メダルを目指して必死に競争しなければ、違う色のメダルさえ獲得することはできない。世界一の競い合いに初めから脱落しているようでは、日本の将来について暗澹(あんたん)とした思いを抱かざるを得ない。


 世界のスパコンランキングによれば、現在の日本最速であるNEC製の「地球シミュレータ」が22位にとどまっている。同機で7年前には世界1位の記録を打ち立てたが、今はIBMやクレイなど米国勢が上位を占めている。次世代スパコンにはこれらを追撃する役割が期待されていた。

 こういうときこそ、「支える」役割を期待したかったのですが。

 NECの撤退に伴い、当初目指していた複合演算システムの実現は難しくなった。多数のコンピューターを連携させるほうが効率的だとの指摘もある。

 クラウドのことですかね。

 残念ながら、『多数のコンピュータを連携』させる技術は非常に高度な職人技(研究者レベルの話ではない)を要する上、多数のコンピュータを連携させた場合の性能の上限は算出可能、つまり自明です*1


 スパコンに注目集まっちゃってるけど、問題は、「自前技術を(なかば採算性を慮外として)どこまで自前で持つべきか」ということ。
 ムダだから、懐事情ゆえに仕方なく削減、ということなら、それはそれで一つの妥当な判断と言える。
 問題なのは、「スパコンがないなら外国から買ってくればいいじゃない」という、安易な「選択と集中」が行われること。

 NECはベクトル型スーパーコンピュータを手がける唯一の国内メーカー。IntelXeonと、Xeon向けベクトル拡張命令セット「AVX」(Advanced Vector Extensions)を組み合わせ、IAベースのスーパーコンピュータでより高い実効性能を目指す。NECはベクトル型スーパーコンピュータ「SXシリーズ」の開発も続ける。


 日本のスパコン開発国家プロジェクトのキーマン「であった」NECの、これが次の一手ですか。
 ブコメにも書いた通り、「世界標準」の策定に「一枚噛む」ということが究極の目的。世界一であることは、そのための最有力な手段だが、二番手というのはある意味そこから「最も遠い」とも言える。

 一方で、課題も浮かんでいる。特に、科学技術に関連する予算は費用対効果の側面だけから論じられない部分がある。社会保障、福祉も実際に現場の声を聞かないと、判断は難しい。合理的な反論がない限り政府は仕分けチームの判断を尊重すべきだが、テーマによっては再検討する工夫があってよかろう。

*1:たとえば、100台連携させるのが最高のパフォーマンスを発揮させると条件仮定すれば、さらに一台のコンピュータを追加すると、その追加一台分をコントロールするためにかえってパフォーマンスが低下する。このことが、コンピュータ連携の難しさ。